COLUMN · 2026.05.21

助成金受給のための就業規則整備|労働条件との整合性が審査を左右する

助成金の申請を検討している事業者から、「書類を揃えて申請したのに不支給になってしまった」というご相談を受けることがあります。その原因として最も多いのが、就業規則と実際の労働条件との乖離です。助成金の審査において、就業規則は単なる添付書類ではなく、受給要件を満たしているかどうかを判断するための根拠資料として機能します。本稿では、就業規則整備の観点から助成金受給の可能性を高めるためのポイントを整理します。

1. 助成金審査における就業規則の位置づけ

雇用関係助成金の多くは、厚生労働省または都道府県労働局が所管しており、申請にあたって就業規則(または労働条件通知書)の提出が求められることが一般的です。特に従業員が10人以上の事業所では、就業規則の作成・届出が労働基準法上の義務となっており、この届出の有無が審査の前提となる場合があります。

10人未満の事業所であっても、助成金によっては就業規則またはそれに準ずる書面(労働条件通知書、雇用契約書等)の整備が求められることがあります。書面の有無だけでなく、記載内容が助成金の要件と合致しているかどうかが精査される点を理解しておくことが重要です。

2. 不支給・返還につながりやすい就業規則の問題点

当事務所がご相談をお受けする中で、審査上の問題となりやすい就業規則の不備として、以下のようなケースが見受けられます。

  • インターネット上のひな形をそのまま流用しており、自社の実態と合っていない
  • 育児・介護休業規定や時間外労働の規定が古く、現行法令に対応していない
  • 就業規則には記載があるが、実際の運用がそれに沿っていない
  • 変更後の就業規則を労働基準監督署に届け出ていない、または周知していない
  • パートタイム・有期雇用労働者向けの規定が別途整備されていない

特に育児・介護休業法の改正対応は継続的に求められており、直近の法改正内容が反映されていない就業規則は、両立支援等助成金など関連助成金の審査において問題となる可能性があります。

3. 助成金の種類別に見る就業規則整備のポイント

助成金の種類によって、就業規則に盛り込むべき規定の内容は異なります。主要なカテゴリごとに確認すべきポイントを整理します。

キャリアアップ助成金では、正社員転換制度や賃金規定の整備が求められます。「正規雇用労働者への転換に関する規定」が就業規則に明示されていること、かつ実際にその規定に基づいて転換が行われたことが確認されます。規定が形式的に存在するだけでなく、転換前後の賃金変動が規定と整合していることが重要です。

両立支援等助成金(出生時両立支援コース等)では、育児休業に関する規定の充実度が問われます。法定を上回る措置(育休取得の促進、代替要員の確保等)を規定していることが、コースによっては加点・要件の対象となる場合があります。

人材確保等支援助成金業務改善助成金では、賃金規定の改定履歴や労働時間に関する規定が確認対象となることがあります。賃金引上げの事実を就業規則や賃金規定の変更という形で証明できるよう整備しておくことが求められます。

4. 就業規則整備と労働条件の整合性確保

助成金審査において、就業規則・賃金規定・労働条件通知書・給与明細・タイムカードは相互に照合されることがあります。書類間の整合性が取れていない場合、助成金の不支給や、支給後の調査による返還命令につながる可能性があります。

特に注意が必要なのは、賃金規定と実際の支給額のズレです。基本給・諸手当の定義が曖昧なまま支給されていると、審査の段階で疑義が生じることがあります。また、変形労働時間制や裁量労働制を導入している場合は、それに対応した就業規則の記載と労使協定の締結・届出が前提として求められます。

当事務所では、行政書士と社会保険労務士のダブルライセンスを活かし、助成金申請に向けた書類全体の整合性確認と、就業規則の見直し・再整備をあわせてご支援することが可能です。大阪・瓦町を拠点としていますが、オンライン対応も行っておりますので、府外の事業者の方からもご相談をいただいています。

5. 就業規則整備の進め方と留意事項

就業規則の整備を進める際には、以下の手順を踏むことが望ましいと考えます。

  • 現状の就業規則と労働条件の棚卸し:既存の規則が実態に合っているか、法令改正に対応しているかを確認する
  • 申請予定の助成金の要件確認:申請前に支給要件と就業規則の記載内容を照合する
  • 必要な規定の新設・改定:要件を満たすための規定を追加・修正する
  • 労働者への意見聴取と届出:就業規則の変更には過半数代表者への意見聴取が必要。10人以上の事業所は労働基準監督署への届出も行う
  • 周知の実施:変更後の就業規則を全労働者が確認できる方法で周知する

なお、助成金の申請タイミングと就業規則の整備タイミングには一定の期間要件が設けられていることがあります。「申請直前に就業規則を慌てて整備した」という状況は、審査上好ましくない評価につながる可能性がありますので、余裕を持ったスケジュールで対応することをお勧めします。

6. 専門家への相談を検討するタイミング

就業規則の整備は、一度作成すれば完了というものではありません。労働関係法令は毎年のように改正が行われており、定期的な見直しと更新が必要です。特に助成金の活用を継続的に検討している事業者にとっては、法令改正への対応状況を常に把握しておくことが重要です。

以下のような状況にある場合は、早めに専門家への相談を検討されることをお勧めします。

  • 就業規則を作成してから数年以上見直していない
  • ひな形をそのまま使用しており、自社の実態に合っているか不安がある
  • 今後1年以内に助成金の申請を予定している
  • 育児・介護休業規定や同一労働同一賃金対応が完了していない

当事務所では、助成金申請の可能性を見据えた就業規則整備のご相談を承っています。社会保険労務士としての専門的知見と、書類全体の整合性を俯瞰する行政書士としての視点を組み合わせ、事業者の実情に即したご提案ができるよう努めています。就業規則の現状診断から始めることも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。具体的な申請可否・採択可能性は事業内容により異なります。

執筆:東亮介(行政書士 第13262050号/社会保険労務士 第27130052号)

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