COLUMN · 2026.05.25

キャリアアップ助成金(正社員化コース)申請のポイント

有期雇用労働者やパートタイム労働者を正社員へ転換する際に活用できる制度として、キャリアアップ助成金(正社員化コース)があります。採用・育成コストの回収に課題を感じている中小企業にとって、適切に活用できれば一定の費用負担軽減につながる可能性があります。当事務所では大阪・瓦町を拠点に、行政書士と社会保険労務士のダブルライセンスを活かし、申請書類の作成から労務管理体制の整備まで一括してサポートしています。本稿では、制度の概要から申請上の注意点まで整理してお伝えします。

1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が所管する雇用関係助成金の一つです。そのなかでも正社員化コースは、有期雇用契約で働く労働者を正規雇用(無期雇用・フルタイム)へ転換した事業主に対して助成金が支給される仕組みとなっています。

助成額は転換の類型によって異なります。有期雇用から正規雇用への転換の場合、中小企業では1人あたり最大80万円が支給される場合があります(2024年度時点。加算措置の適用状況によって変動することがあります)。なお、助成額や要件は毎年度改定されることがあるため、申請前に必ず最新の支給要領を確認することをお勧めします。

2. 主な支給要件の確認ポイント

申請にあたってはいくつかの要件を満たす必要があります。要件を正確に理解しないまま転換手続きを進めると、後から不支給となる可能性があるため注意が必要です。以下に主な確認ポイントを整理します。

  • 雇用期間の要件:転換前に同一事業主のもとで通算6か月以上有期雇用契約で雇用されていることが必要です。
  • キャリアアップ計画の策定:転換を実施する前に、労働組合または労働者の代表者の意見を聴いた上でキャリアアップ計画書を作成し、管轄のハローワーク(公共職業安定所)へ提出しておく必要があります。
  • 就業規則等への明記:正社員への転換制度が就業規則または労働協約に明確に規定されていることが求められます。口頭の合意や内規のみでは要件を満たさない場合があります。
  • 転換後の処遇変更:転換に際して賃金が3%以上増額されていることが必要です(加算要件の場合は異なります)。
  • 支給申請のタイミング:転換日から起算して6か月分の賃金支払い後、2か月以内に申請する必要があります。

これらはあくまでも主要な要件の概要であり、個々の事情によって判断が異なる場合があります。当事務所では要件の充足状況について個別にヒアリングを行った上で、対応方針をご提案しています。

3. 申請前に整備しておくべき社内書類

助成金の申請では、要件を満たしていることを客観的な書類で証明することが求められます。書類が不足している場合や記載内容に矛盾がある場合、不支給または返還指示の対象となる可能性があります。

事前に整備しておくべき主な書類は以下の通りです。

  • キャリアアップ計画書(ハローワーク受理済みのもの)
  • 転換前後の労働条件通知書または雇用契約書
  • 転換前6か月分および転換後6か月分の賃金台帳・出勤簿
  • 正社員転換に関する規定が盛り込まれた就業規則(変更届の受理印入り)
  • 転換辞令または転換を確認できる書類

当事務所が相談を受ける案件の中で特に多い問題として、「就業規則に転換制度の規定がない」「賃金台帳と実際の支払い内容に齟齬がある」というケースが挙げられます。社会保険労務士の立場から労務管理全体を見直した上で申請準備を進めることを、当事務所ではお勧めしています。

4. よくある落とし穴と対策

申請実務において注意が必要なポイントをいくつか整理します。

①転換のタイミングの誤り
キャリアアップ計画書をハローワークへ提出する前に転換を実施してしまうケースがあります。計画書の提出は転換の前提条件であるため、転換後の提出では原則として助成対象となりません。

②「正社員」の定義の誤認
「無期雇用」にしたからといって、必ずしも助成金上の「正規雇用労働者」に該当するわけではありません。週所定労働時間が正社員と同等であること、その他の処遇が正社員と同等の待遇となっていることなど、複合的な要件があります。

③賃金増額の計算誤り
賃金を3%以上増額する要件については、比較の基準となる賃金の範囲(基本給のみか、諸手当を含むかなど)の解釈を誤るケースがあります。支給要領で定められた計算方法を正確に確認することが必要です。

④申請期限の失念
転換後6か月の賃金支払いが完了してから2か月以内という申請期限は、業務が繁忙な時期と重なると見落としやすいポイントです。スケジュール管理を徹底することが重要です。

5. 申請手続きの全体的な流れ

手続きの流れを大まかに把握しておくことで、準備漏れを防ぐことができます。一般的なフローは以下の通りです。

  • ① 就業規則・労使協定等の整備(転換制度の明記)
  • ② キャリアアップ計画書の作成・ハローワークへの提出
  • ③ 対象労働者の正社員転換(転換辞令・新雇用契約書の締結)
  • ④ 転換後6か月間の賃金支払い
  • ⑤ 支給申請書・添付書類の準備
  • ⑥ 管轄の都道府県労働局またはハローワークへ支給申請
  • ⑦ 審査・支給決定(審査期間は数か月かかる場合があります)

なお、不正受給と判断された場合は助成金の全額返還に加えてペナルティが課されることがあります。制度を適正に活用するためにも、申請内容については専門家と十分に確認した上で進めることを推奨します。

6. 当事務所へのご相談について

キャリアアップ助成金(正社員化コース)の申請は、労務管理・就業規則整備・申請書類作成が密接に絡み合う手続きです。行政書士と社会保険労務士のダブルライセンスを持つ当事務所では、就業規則の新規作成・改訂から助成金申請書の作成・提出代行まで、ワンストップで対応することが可能です。

大阪市内および近隣エリアの事業者様はもちろん、オンラインでのご相談にも対応しています。「正社員化を検討しているがどこから手をつければよいか分からない」「以前申請して不支給になった」といったご事情をお持ちの方も、まずはお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っています(事前予約制)。

なお、助成金の支給は審査機関の判断によるものであり、申請を行ったとしても必ずしも支給が確約されるものではありません。当事務所では適正な申請をサポートすることを方針としており、要件充足が困難と判断される場合はその旨を正直にお伝えしています。

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※本記事は一般的な解説であり、個別の結果を保証するものではありません。具体的な申請可否・採択可能性は事業内容により異なります。

執筆:東亮介(行政書士 第13262050号/社会保険労務士 第27130052号)

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